ご家族へお伝えしたいこと
患者さまにとって、何よりも大切な“予防医療”
ご高齢の患者さまや、多くの合併症を抱えている患者さまにとって、急性疾患を発症することは、思いもよらない様々な病態を引き起こします。例えば、高齢者が肺炎で入院されますと、肺炎自体は治るかもしれないのですが、その後寝たきりになったり、物が食べられなくなったり、嚥下(えんげ)障害※1が始まったり、認知症が進んだり…といったADL(日常生活動作)の低下を招いてしまいます。ですので、急性疾患の発症を予防することが何よりも大切です。
清泉メディカルクリニックが柱にしている、
“4つのこと”
予防医療とは、非常に生活に密着したもので、実は家庭内でできることがたくさんあります。当クリニックでは、4つのことを予防の柱として考えております。1つ目は、循環動態※2の維持です。循環動態が悪化するということは、例えば、脳では脳梗塞や脳出血、心臓では心筋梗塞、腎臓では腎不全、四肢では壊疽(えそ)を招きます。2つ目は、感染症の予防です。上下気道の感染症と尿路感染症が一番多いのですが、この感染症の予防も日常生活でできることが多々あります。3つ目が、転倒の予防です。正しい栄養管理や、リハビリ方法、自宅における補助器具の取り付けなどです。4つ目が、これは予防ではないのですが、消化器を中心としたがんを早期発見することです。この4つの予防、早期発見を行うということが、清泉メディカルクリニックで最も大きな柱にしていることです。
日常生活の中で、チーム全員で
予防して行く
予防の多くは、日常生活の中で行えます。病態と全身状態を正しく理解し、ご家族、訪問看護師、介護スタッフが協力しながら実施して行くことが大切です。我々在宅医療に携わる医師は、消化器、循環器、呼吸器、精神科などそれぞれ専門の医療分野はもちろんのこと、慢性期から急性期の疾患、予防医療について幅広く全身的な管理を求められております。全身状態を正しく把握し、予防できれば、病態も安定しご家族への負担も軽減されるのです。
患者さまだけではなく、ご家族の不安を取り除くことも大切
また、がんの患者さまが多いので、緩和医療についてもお話したいと思います。緩和医療を行うにあたり、我々が目標としていることが3つあります。まず1つ目は、痛みをコントロールするということです。2つ目に、嚥下機能の低下に伴う、呼吸苦の予防です。3つ目は、不安を取り除くということです。この不安とは、患者さまご本人の不安を取り除くだけではなく、ご家族の不安を取り除くことも大切だと考えております。清泉メディカルクリニックでは、患者さまのご家族からのちょっとした質問にも、医師が24時間直接対応しております。ご家族は医療従事者ではないので、医療従事者にとっては簡単な問題だったとしても、ご家族にとってはとても大きな問題であることが多々あります。また、患者さまのご家族に対して行う指示を、3つまでに絞っております。それは、ご家族に必要以上のご負担を掛けないようにするためです。それ以外のことは、スタッフがフォローできるような体制で臨めるよう、日々心掛けております。
※1[嚥下障害]種々の原因によって嚥下(飲み込み)の機能が損なわれること。
※2[循環動態]心臓機能をはじめとした、全身の血液循環の状態を指したもの。